自動車保険の対人賠償・対物賠償の保険金額を「無制限」にすべき理由は?
2026年3月2日
自動車保険の対人賠償と対物賠償の保険金額は、無制限に設定されている、あるいは「無制限」以外を選択できる場合も無制限に設定して契約することが一般的です。
しかし、「本当に無制限にしたほうがよいのか?」「無制限にすべき理由は?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、自動車保険の対人賠償・対物賠償の保険金額を無制限にすべき理由を解説します。無制限にしている方の割合や、対人賠償・対物賠償以外で保険金額を無制限に設定できる補償も紹介するので、ぜひご覧ください。
対人賠償・対物賠償の「保険金額無制限」とは
自動車保険の対人賠償・対物賠償の「保険金額無制限」とは、万一自動車事故を起こし、他人を死傷させたり、他人の財物を壊したりして法律上の損害賠償責任を負った場合、支払われる保険金の限度額に上限を設けないことを指します。
無制限と聞くと「賠償責任額を超えて無制限に保険金が支払われるの?」と思う方がいるかもしれませんが、実際はそうではありません。保険会社が支払うのは、事故によって生じた賠償責任額までであり、それ以上の金額は支払われません。
つまり、対人賠償・対物賠償の保険金額を無制限で契約していれば、事故を起こして高額の損害賠償責任を負うことになった場合、加害者が支払うべき賠償責任額の範囲内で上限なく保険金が支払われます。
なお、対人賠償・対物賠償は、基本補償として自動的にセットされていることが一般的です。
自動車保険の対人賠償とは
対人賠償とは、自動車保険の基本的な補償の一つです。ご契約のお車の事故により、補償の対象となる方が、事故によってお車に乗車中の方や歩行者などの他人を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った場合に、保険金が支払われます。
例えば、以下のような場合に補償されます。
- 衝突事故で相手方のお車の運転手にケガをさせてしまった
- 交通事故で歩行者を死亡させてしまった
東京海上ダイレクト(以下、当社)の自動車保険では、安心してお車にお乗りいただくためにすべてのご契約に対人賠償を付帯しており、保険金額を無制限にしています。
自動車保険の対物賠償とは
対物賠償も、対人賠償と同じく、自動車保険の基本的な補償の一つです。ご契約のお車の事故により、他人の財物に損害を与えたり、線路に立ち入り電車などを運行不能にしたりすることで、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償されます。
損害賠償責任への補償であるため、自宅の塀を壊してしまった場合など、ご自身で所有する物への損害は補償されません。
例えば、以下のような場合に補償されます。
- 衝突事故で相手方のお車を壊してしまった
- 衝突事故で他人の家の塀を壊してしまった
当社では、すべてのご契約に対物賠償を付帯※1しており、保険金額を無制限にしています。
一部の契約では対物賠償を付帯できない場合があります。
対人賠償・対物賠償の保険金額が無制限に設定されているお車の割合は?
損害保険料率算出機構によると、対人賠償の保険金額が無制限に設定されているお車の割合は99.6%、対物賠償の保険金額が無制限に設定されているお車の割合は96.5%です※2。いずれも95%を超えており、保険金額が無制限に設定されているお車が多いことがわかります。
対人賠償
| 保険金額 | 設定されているお車の割合 |
|---|---|
| 2,000万円まで | 0.2% |
| 2000万円超5,000万円まで | 0.0% |
| 5,000万円超1億円まで | 0.1% |
| 1億円超 | 0.0% |
| 無制限 | 99.6% |
対物賠償
| 保険金額 | 設定されているお車の割合 |
|---|---|
| 500万円まで | 1.3% |
| 500万円超1,000万円まで | 1.1% |
| 1,000万円超2,000万円まで | 0.5% |
| 2,000万円超 | 0.6% |
| 無制限 | 96.5% |
出典: 損害保険料率算出機構「2024年度 自動車保険の概況」
自動車保険の対人賠償を無制限にすべき理由
相手方を死傷させた場合、法律で加入が義務付けられている「自賠責保険(強制保険)」でも補償されます。しかし、自賠責保険の補償額には以下の通り限度があり、損害状況によっては自賠責保険のみでは補償が十分ではない場合があります。
自賠責保険(強制保険)の補償内容
| 支払限度額(被害者1名あたり) | |
|---|---|
| ケガによる損害 | 最高 120万円 |
| 後遺障害による損害 | 最高 4,000万円 (障害等級による) |
| 死亡による損害 | 最高 3,000万円 |
重傷事故や死亡事故を起こしてしまった場合には、この限度をはるかに超える高額な損害額が認定されるケースもあるため、自動車保険(任意保険)の対人賠償で備える必要があります。
また、対人賠償事故の損害賠償額には、治療にかかる費用だけでなく、休業損害や逸失利益なども含まれるため、高額になるケースが少なくありません※3。対人賠償の保険金額を無制限に設定すべきなのは、このようなケースにも備えるためです。
休業損害とは、傷害によって発生した収入の減少、逸失利益は障害による労働能力の減少によって将来発生するであろう収入の減少を指します。
自動車保険の対物賠償を無制限にすべき理由
加入義務のある自賠責保険は、交通事故による被害者救済を目的としています。そのため、被害者のケガや死亡による損害のみが補償されます。相手方の物(自動車、積載物など)や公共物(電柱など)の損害、ご自身のお車の損害やケガは補償されません。
また、対物賠償事故の損害賠償額には、相手方の物や公共物の修理費だけでなく、店舗などに衝突した場合の建物・什器備品の修理費や営業損失(店舗などが交通事故による被害を受けて営業できなくなった場合などに生じる営業上の損失)の費用も含まれます。そのため、対物賠償事故でも、裁判で高額な損害額が認定されるケースは少なくありません。
そのようなケースに備えて、対物賠償に関しても、対人賠償と同様に保険金額を無制限に設定すべきだと言えます。
自動車保険によっては「対物超過特約※4」を付帯できる
対物超過特約とは、自動車保険に付帯可能な特約の一つです。
例えば当社の場合、追突事故により相手方のお車を壊してしまったとき、対物賠償では、相手方のお車の時価額(事故が起きたときのお車の市場価格)までは対物賠償保険金をお支払いできますが、時価額を超える修理費はお支払いすることができません。
対物超過特約を付帯していると、時価額を超える修理費が発生しても、その超過分に補償の対象となる方の過失割合を乗じた額が、当社の場合には50万円を限度に保険金として支払われます。
当社の自動車保険では、お客さまのうち8割以上の方が対物超過特約を付帯しています。(2023年度当社契約データより)
対物超過特約は、当社における特約名称(短縮表記)です。特約名称は保険会社により異なる場合があります。
賠償責任額が保険金額を超えると示談交渉サービスを利用できないことも
自動車事故では、当事者間の話し合いによる「示談」によって解決を図る場合があります。示談交渉をご自身だけで進めると、多くの時間や労力がかかるだけでなく、不利な条件で示談に応じてしまうおそれがあるため、保険会社や弁護士などのサポートを受けましょう。
自動車保険の対人賠償・対物賠償には、保険会社が事故のお相手や相手保険会社との示談交渉をお客さまに代わって行う「示談交渉サービス」がついていることが一般的です。
ただし、賠償責任額が保険金額を明らかに超えている場合は、保険会社がお客さまに代わって示談交渉できないことが一般的です。このような万一の事態を防ぐには、対人賠償・対物賠償の保険金額を無制限に設定しておくことが重要です。
なお、賠償責任額が保険金額を明らかに超えている場合以外にも、示談交渉が行えないケースはあります。当社では、次のような場合、お客さまに代わって示談交渉することができません。
- 補償の対象となる方に過失がない場合
- 当社との交渉について、お相手の同意が得られない場合
- 対物賠償の契約がない場合の対物賠償事故
- 自賠責保険などのご契約が締結されていない場合の対人賠償事故 など
人身傷害も、保険金額を「無制限」にできる補償の一つ
「人身傷害」も、一般的には保険金額を無制限にできる補償です。
人身傷害とは、対人賠償・対物賠償と同様に自動車保険の基本的な補償の一つです。自動車事故により、補償の対象となる方が死傷された場合に、過失の有無に関係なく、治療費、休業損害、精神的損害、逸失利益などの実際の損害額に対して保険金が支払われます。
人身傷害を付帯していない場合、相手方の過失分については相手方から補償されますが、お客さまご自身に過失がある場合、過失割合分に相当する治療費や休業損害などは相手方から受け取れず自己負担となります。
しかし、人身傷害を付帯していると、この自己負担が補償されます。当社の自動車保険では、ご自身や同乗者の方が安心して治療を受けられるよう、すべてのご契約に人身傷害を付帯しています。人身傷害の補償内容について詳しくは以下のページよりご覧ください。
労働者災害補償制度によって既に給付が決定しまたは支払われた場合や、相手方から賠償金が支払われた場合などは、その額を差し引いて支払われることが一般的です。
まとめ
対人賠償事故による損害は自賠責保険によって補償されますが、保険金額には上限があり、自賠責保険だけで十分とは言えません。また、対物賠償については、自賠責保険による補償の対象外です。
対人賠償事故、対物賠償事故の損害賠償額は、高額になるケースも少なくありません。高額の損害賠償責任を負った場合に備えて、対人賠償・対物賠償の保険金額を無制限に設定することをおすすめします。
監修:竹国 弘城
1級FP技能士・CFP®
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題についてみずから考え、行動できるようになってもらうための活動をおこなう。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。
資格情報: 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)