自動車保険と生命保険の保険金は両方受け取れる?違いや注意点を解説
2024年3月8日(2026年4月10日更新)
保険にはさまざまな種類があります。大別すると、自動車保険を含む「損害保険」と「生命保険」に分けられますが、その違いについての理解があやふやな方も多いのではないでしょうか。本記事では、自動車保険と生命保険の特徴・違いを整理したうえで、自動車事故にあった場合両方から保険金を受け取れるのか、万一の自動車事故にどのように備えたらよいかを解説します。
自動車保険と生命保険の違い
ご自身が所有するモノへの損害など偶然の事故により受けた損害に備える損害保険の一種である「自動車保険」と、人に関するリスクに備える「生命保険」は、主に補償(保障)内容が異なります。
特に、自動車保険の補償内容の一つである「人身傷害」は、自動車事故により保険の対象者(被保険者)が死傷されたときに補償を受けられるため、生命保険の保障対象との共通点があり違いがわかりにくく感じる方もいるでしょう。
自動車保険には、対人賠償、対物賠償、人身傷害、車両保険などがありますが、下表では自動車保険のうち人身傷害を例として、生命保険との主な違いをまとめました。
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| 自動車保険(人身傷害) | 生命保険(医療保険を含む) | |
|---|---|---|
| 加入目的 | 自動車事故による損害 (例:治療費・休業損害など)に対する経済的な備え |
病気・ケガ・死亡などに対する経済的な備え |
| 補償(保障)範囲 | 保険の対象者(被保険者)の自動車事故によるケガ・死亡・後遺障害 | 保険の対象者(被保険者)の病気・ケガ・死亡・後遺障害など |
| 保険金の支払い方式 | 実損払 |
定額払 |
なお、補償(保障)や特約の名称、補償(保障)範囲は保険会社によって異なる場合があります。
以降では、加入目的、補償(保障)範囲、保険金の支払い方式の観点から、自動車保険と生命保険の違いを順に解説します。
加入目的
自動車保険の主な加入目的は、予期せぬ自動車事故による経済的な損害に備えることです。事故により相手方への賠償責任やお車の修理費、ご自身のケガに伴う費用などが生じた場合でも、保険によって負担を軽減し、安心してお車を使用できるよう備えます。
一方で、生命保険の主な加入目的は、被保険者(保険対象者)が将来直面し得る死亡や病気、ケガなどのリスクに備え、経済的な保障を確保することです。医療費や介護費用、遺族の生活費などに備え、ご自身やご家族の生活を支える役割があります。
補償(保障)範囲
自動車保険の補償範囲は契約内容によって異なり、一般的には、自動車事故の相手方への補償(主に対人賠償・対物賠償など)のほか、お車によるケガの補償(主に人身傷害など)や、ご自身のお車の補償(主に車両保険など)があります。
一方、生命保険の保障範囲は、人の生死や健康状態です。生命保険には、死亡保険や医療保険、がん保険などがあり、死亡・病気・ケガ・介護や、それに伴う長期的な収入減といった幅広いリスクを保障することに焦点をあてています。
保険金の支払い方式
自動車保険は、原則として「実損払」の仕組みを採用しています。実損払は、実際に発生した損害額(お車の修理費や賠償額など)に応じて、契約の範囲内で保険金が支払われる仕組みです。そのため、自動車保険では、実際に生じた損害を埋め合わせるという意味で「補償」という表現が使われます。
例えば、車両保険に加入しているなど一定の条件を満たしていると、修理にかかった費用の最大全額が保険会社から支払われます※1。人身傷害においては、被保険者の過失割合にかかわらず、実際にかかった治療費や休業損害などが保険金として支払われます。対人賠償や対物賠償、車両保険などでは、事故の過失割合や免責金額に応じて自己負担が生じる場合があります。
事故の内容やご契約内容によっては、自己負担が発生することがあります。
一方、自動車保険と異なり、生命保険は「定額払」が基本です。ここでいう定額払とは、保険金もしくは給付金支払いの事由に該当した場合、契約時にあらかじめ定めた金額が支払われる方式です。
自動車事故によってケガ・死亡した場合、自動車保険・生命保険両方の保険金が受け取れるの?
では、自動車事故によってケガをしたり、死亡したりした場合は、自動車保険・生命保険の両方から保険金の支払いを受けることができるのでしょうか。
ご自身が被害者の場合と加害者の場合に分けて説明します。
ご自身が被害者の場合
自動車事故でご自身が被害者となり(ご自身の過失割合を0と仮定)、ご自身がケガをしてしまった、あるいは、死亡してしまった場合を考えてみましょう。
自動車保険については、まず相手方の自賠責保険からご自身の治療費や慰謝料などが賠償金として支払われます。相手方が自動車保険に加入していて、そのなかに対人賠償が含まれていれば、自賠責保険などで支払われるべき金額を超える部分が相手方の自動車保険から支払われます。
次に、生命保険については、死亡された場合には死亡保険金、ケガで入院治療が必要な場合には入院給付金など、契約内容に応じた金額をご自身の生命保険から受け取ることができます。一般的に、相手方の自動車保険からの賠償金と重複する場合に保険金が支払われないような条件がついていることはありません。
例えば、ご自身が事故にあって、死亡されたケースを考えてみましょう(相手方の対人賠償の保険金額は無制限とします)。
損害額が5,000万円だった場合、相手方の自動車保険からは5,000万円が支払われます。一方、ご自身で死亡時に3,000万円支払われる生命保険に加入していた場合、生命保険からはご契約で定めた3,000万円の保険金が支払われます。つまり、合計で8,000万円を受け取ることになります。
ご自身が加害者の場合
自動車事故でご自身が加害者となり(ご自身の過失割合を100と仮定)、ご自身もケガをしてしまった、あるいは死亡してしまった場合を考えてみましょう。
まず、自動車保険については、ご自身の自動車保険で人身傷害を付帯していれば、実際の損害額が保険金として支払われます。なお、人身傷害では、ご自身の過失有無に関係なく補償されます。
次に、生命保険については、死亡された場合には死亡保険金、ケガで入院治療が必要な場合には入院給付金など、契約内容に応じた金額をご自身の生命保険から受け取ることができます。こちらも、ご自身の過失有無に関係なく保障を受けられます。
なお、ご自身・相手方の双方に過失がある自動車事故においても、ご自身がケガをしてしまった、あるいは死亡してしまった場合においては、ご自身の自動車保険の人身傷害から保険金が支払われます。生命保険についても、保険金を受け取ることができます。
病気が原因で事故を起こした場合の保険金はどうなる?
自動車の運転中に心筋梗塞や脳卒中、てんかん発作などで急に体調が悪化し、事故を起こしてしまうことがあります。この場合でも、対人賠償や対物賠償では、故意による事故でない限り原則として保険金が支払われます。
しかし、人身傷害や搭乗者傷害※2、車両保険などでは、事故の原因となった病気の状態や事故状況によっては保険金が支払われない可能性があるため注意が必要です。
搭乗者傷害は、ご契約のお車に乗車中の方が死傷されたときに、契約時に定めた保険金額を定額で補償する「定額払」の保険です。東京海上ダイレクトの自動車保険では、人身傷害に搭乗者傷害の一部や自損事故傷害、無保険車傷害の補償内容が含まれています。名称は保険会社により異なる場合があります。
道路交通法第66条では「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」と定められています。そのため、病気によって正常な運転ができない状態で運転すると、状況によっては「重大な過失」に該当し、契約内容によっては保険金が支払われない場合があります。
病気で正常な運転ができない状態のときは、事故を起こすリスクが高いだけでなく、保険金が支払われないリスクも伴うため、運転してはいけません。
生命保険では、契約時点における被保険者の健康状態や既往歴についての告知義務があり、その健康状態によっては保険に加入できないことがあります。もし虚偽の告知や告知漏れがあった場合、将来的に保険金が支払われない可能性があるため、正確な告知が必要です。
一方で、告知義務を適切に果たして契約している場合は、病気などが原因で自動車事故に遭ったときでも、契約で定めた支払条件(例:入院・手術・死亡など)を満たしていれば、契約内容に応じて保険金・給付金を受け取れます。
また、自動車保険では、生命保険のように健康状態や既往歴の告知は原則として求められません。ただし、車両の情報や、ご契約者の方・主に運転される方の条件(年齢、使用目的、主な使用地など)について告知義務があり、告知の内容によっては契約が成立しなかったり、補償条件が制限されたりすることがあります。
重い持病などがある場合、そもそも運転免許証の取得や更新ができず、自動車保険にも加入できないケースがあるので注意しましょう。
自動車保険と生命保険の両方に加入する場合の注意点
自動車保険と生命保険の両方に加入する場合は、以下の点に注意が必要です。
- 補償(保障)の重複に注意する
- 特約の重複に注意する
- 請求漏れに注意する
自動車保険と生命保険はそれぞれ独立した契約ですが、万一のときのお金の備えという点で重なる部分もあります。そのため、新たに契約する際や契約内容を見直す際は、別々に考えるのではなくセットで確認することが大切です。注意点を詳しく見ていきましょう。
補償(保障)の重複に注意する
自動車保険の人身傷害と、生命保険(医療保険・死亡保険)は、自動車事故によるケガや死亡に対する補償(保障)が一部重複する可能性があります。必要以上に補償(保障)を手厚くすると、保険料の負担が大きくなることがあるため注意しましょう。
ご自身の加入している両方の保険の契約内容をセットで確認し、トータルで最適な補償(保障)内容になるよう調整することが大切です。
特約の重複に注意する
一部の生命保険(死亡保険など)では、自動車事故などの不慮の事故や所定の感染症で死亡したときに、主契約の死亡保険金に上乗せして「災害死亡保険金」を受け取れる場合があり、保障を得るために「災害割増特約」などの特約を任意で付加できるケースがあります。
一方、自動車保険でも、人身傷害や搭乗者傷害などを付帯している場合は、ご契約のお車での自動車事故などにより死亡したときに、契約内容に応じて保険金が支払われます。
そのため、自動車事故による死亡などでは、自動車保険(人身傷害や搭乗者傷害など)に加えて、生命保険の災害割増特約を付帯していると、契約内容に応じて両方から保険金を受け取れることがあります。
自動車保険と生命保険それぞれの保険金額や保険料負担を確認し、補償(保障)が過剰に重なった特約がないか、定期的に見直しましょう。
請求漏れに注意する
万一事故が発生した場合は、請求漏れを防ぐことが重要です。加入している自動車保険会社と生命保険会社の両方に速やかに連絡を取り、請求手続きの案内を受けることが大切です。
スムーズなお手続きのためにも、保険会社の連絡先や担当部署を事前に確認し、把握しておくのがよいでしょう。
自動車事故で自動車保険と生命保険の保険金を受け取るときのポイント
自動車事故によりケガをしてしまった、あるいは死亡してしまった場合、契約内容によっては、自動車保険(人身傷害・搭乗者傷害など)と生命保険の両方から保険金が支払われることがあります。
この事実を鑑みると、「生命保険に加入していれば、人身傷害には加入する必要がない」と考える方も、なかにはいらっしゃるかもしれません。ただし、この考え方については注意が必要です。
事故の状況や加入している保険の契約内容によって、支払われる保険金の有無や金額は異なり、すべての事故で必ず両方から支払われるわけではありません。
人身傷害とは、補償の対象となる方が死傷された場合に、過失の有無に関係なく、治療費や休業損害などを補償する保険です。補償範囲に該当する方は、主に運転される方本人やそのご家族、お車の同乗者などです。
一方、生命保険の被保険者はご自身のみです。ご自身のケガや死亡には対応できても、ご家族や同乗者がケガまたは死亡してしまった場合の補償は、ご自身の生命保険でカバーすることはできません。ご家族や同乗者の補償を確保するためにも、人身傷害保険の加入を検討しましょう。
まとめ
自動車保険と生命保険は、加入目的、補償(保障)範囲、保険金の支払い方式などが異なるため、「ご自身や家族にどのくらいの補償(保障)が必要か」を踏まえて、どちらに加入するか、あるいは両方に加入するかを検討することが大切です。
すでに両方に加入している場合は、補償(保障)内容や保険料負担を確認し、同じような補償(保障)が必要以上に重複していないか定期的に見直してみましょう。
監修:竹国 弘城
1級FP技能士・CFP®
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題についてみずから考え、行動できるようになってもらうための活動をおこなう。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。
資格情報: 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)