交通事故で使える保険を整理して紹介!自動車保険の補償内容もあわせて解説
2026年10月29日
自動車による交通事故(自動車事故)の被害にあった場合、一般的に加害者側の自賠責保険(強制保険)および自動車保険(任意保険)から補償を受けられます。
ただし、加害者が自動車保険に加入していない場合や、当て逃げ・ひき逃げなどで加害者を特定できない場合、被害者にも過失がある場合などは、被害者側の自動車保険や公的な救済制度の利用が必要となることがあります。
また、被害者自身が生命保険・医療保険などに加入している場合は、加害者側の保険とは別に、契約内容に応じて保険金・給付金を受け取れる場合があります。
本記事では、例として「お車同士の衝突により被害者がケガをし、被害者のお車にも損害が出たケース」を取り上げ、交通事故の被害者が受けられる補償の内容や利用できる保険の種類を解説します。加えて、ご自身が加害者になってしまった場合に使える主な保険についても解説します。なお、過失割合などの整理がつき、被害者(損害賠償を受ける側)と加害者(損害賠償責任を負う側)が明確な事故を想定します。
さらに、当て逃げやひき逃げなど、加害者が特定できないケースで、被害者が補償を受けられる保険や制度についてもあわせてご紹介します。
交通事故で被害者が補償を受けられる保険
交通事故の被害にあった場合、補償を受けられる保険は大きく「加害者が加入している保険」と、「被害者が加入している保険」に分けられます。
加害者に法律上の損害賠償責任がある場合は、まず加害者側の保険で補償されることが基本です。一方、加害者側の保険による補償が不足する場合や、被害者にも過失がある場合などは、被害者側の保険で補える可能性があります。被害者が補償を受けられる主な保険は以下の通りです。
| 被害者が補償を受けられる保険の種類 | 内容 |
|---|---|
| 加害者側の保険(被害者への賠償) |
|
| 被害者側の保険 |
|
補償・特約の名称は保険会社によって異なる場合があります。
被害者自身が生命保険・医療保険などに加入している場合は、自動車保険による補償とは別に、契約内容に応じて死亡保険金や入院給付金などを受け取れることもあります。
この他に、交通事故でケガをした場合の治療にも、業務中・通勤中なら労災保険、それ以外は健康保険を利用できる可能性があります。
以下では、被害者が補償を受けられる保険について詳しく解説します。
①自賠責保険(強制保険)
自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法により加入が義務付けられている強制保険で、「自動車損害賠償責任保険」または共済組合による「自動車損害賠償責任共済」を指します。
自賠責保険は、交通事故による被害者救済を目的とした保険です。そのため、被害者のケガや死亡による損害のみが補償の対象となり、被害者の所有する物(自動車など)の損害や、加害者の損害については補償されません。
また、自賠責保険の補償額には限度があり、損害状況によっては自賠責保険のみでは補償が十分でない場合があります。
| 自賠責保険の補償内容 | 支払限度額(被害者1名あたり)※ |
|---|---|
| ケガによる損害 | 最高120万円 |
| 後遺障害による損害 | 最高4,000万円(障害等級による) |
| 死亡による損害 | 最高3,000万円 |
②加害者側の自動車保険(任意保険)
自賠責保険の補償で不足する部分は、加害者が加入している自動車保険の対人賠償や対物賠償によって補償されます。
対人賠償
交通事故により、被害者が死傷した場合は、加害者が加入している自動車保険の対人賠償によって、治療費や慰謝料などが補償されます。
対人賠償では、加害者が負担する法律上の損害賠償責任の額から、自賠責保険などによって支払われるべき額を差し引いた額について、保険金額を限度に保険金が支払われます。対人賠償の補償範囲に含まれるのは、ケガの治療費・精神的損害(慰謝料)・休業損害・逸失利益・葬祭費などです。
対物賠償
交通事故により、お車などの物に対する損害を受けた場合は、加害者が加入している自動車保険の対物賠償によって補償されます。
対物賠償では、加害者が負担する法律上の損害賠償責任の額について、保険金額を限度に保険金が支払われます。対物賠償の補償範囲に含まれるのは、お車や家屋の修理費(時価額が限度)などです。
③被害者側の自動車保険(任意保険)
交通事故の被害者になった場合、被害者自身が加入している自動車保険を使える場合があります。
ただし自動車保険を使った場合は等級に影響する場合がありますので、注意が必要です。
等級は、1等級から20等級まであり、等級に応じて保険料が割引・割増されます。「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」にあって保険金を請求した場合には、翌年の等級が下がり保険料が高くなります。
一方、「ノーカウント事故」にあって保険金を請求した場合、翌年の等級の算出においては、事故がなかったものとして扱われます。
等級や事故の種類について、詳しくはこちらをご覧ください。
自動車保険の等級制度ガイド
人身傷害
人身傷害とは、自動車による交通事故で、補償範囲に含まれる方が死傷された場合に、過失の有無に関係なく、治療費・休業損害・精神的損害・逸失利益などの実際の損害額に対して保険金額を限度に保険金が支払われます。
なお、一般的に人身傷害には2つのタイプがあり、補償される範囲が異なります。ご契約のお車に乗車中の事故に加えて、ご契約のお車以外に乗車中の事故や歩行中の自動車事故まで補償する「車内・車外ともに補償」タイプと、ご契約のお車に乗車中の事故のみ補償する「車内のみ補償」タイプです(保険会社によって、名称が異なる場合があります)。
一般的に、人身傷害のみを利用した場合は、翌年の契約において、等級に影響はありません。
車両保険
車両保険とは、衝突や接触の事故のほか、台風・洪水や盗難、いたずらなどにより、ご契約のお車に損害が生じた場合に修理費などを補償する保険です。
交通事故によりお車に損害が生じた場合は、通常は加害者側の自動車保険の対物賠償から補償されます。しかし、加害者が自動車保険に加入していない場合などは、被害者自身の自動車保険の車両保険を使うこともできます。
ただし、一般的には事故によってご契約のお車に損害が生じて車両保険を使うと、翌年の等級が下がって保険料が高くなります。
そのため、車両保険を使うかどうかは、車両保険を使ってまかなえる修理費と、車両保険を使った場合の翌年以降の保険料の増額分を比較して判断することをおすすめします。
車両保険の補償範囲や保険を使う際の注意点に関して、以下のコラムでも詳しく解説しています。
車の修理における自動車保険の賢い使い方は?補償範囲と保険を使う際の注意点を徹底解説
④生命保険・医療保険など
被害者自身が生命保険・医療保険などに加入している場合は、契約内容に応じて保険金や給付金を受け取れる場合があります。
生命保険は「定額払」が基本です。契約内容に応じた金額を受け取ることができ、一般的に、相手方の自動車保険からの賠償金と重複する場合に保険金が支払われないような条件がついていることはありません。
また、医療保険に加入している場合は、交通事故によるケガで入院や手術をした際に、契約内容に応じて入院給付金や手術給付金などを受け取れる可能性があります。
自動車保険と生命保険の保険金を受け取るときのポイントなどについて、以下のコラムでも詳しく解説しています。
自動車保険と生命保険の保険金は両方受け取れる?違いや注意点を解説
加害者を特定できない場合、自動車保険の補償はどうなる?
ここまでは加害者を特定できるケースをご説明してきましたが、ここからは加害者を特定できないケースをご説明します。交通事故の被害者は、原則として加害者側の自賠責保険・自動車保険から補償を受けます。しかし、当て逃げやひき逃げのように加害者を特定できない場合は損害賠償を請求することができません。
以下では、「当て逃げ」と「ひき逃げ」に分けて、被害者がどのような保険で補償を受けられるのかを解説します。
当て逃げの場合
当て逃げされ、お車に損害を被った場合は、被害者自身が加入している自動車保険の車両保険で補償を受けられる可能性があります。
一般的に、車両保険には「一般」と「限定(エコノミー)」の2つのタイプがあります(保険会社によって、名称が異なる場合があります)。
主な違いは、「限定(エコノミー)」は保険料が安い代わりに補償範囲が限定され、単独事故などの一部事故が補償対象とならないことです。
保険会社や車両保険のタイプによって補償範囲は異なります。例えば東京海上ダイレクト(以下、当社)の場合、当て逃げによるお車の損害は、いずれのタイプの車両保険でも補償されます。保険金額を限度に、修理費から免責金額を引いた額が支払われます(修理費が保険金額を下回る場合)。なお、修理費が保険金額以上となる場合は全損となり、免責金額が差し引かれず、設定した保険金額が支払われます。
保険会社によっては、「限定(エコノミー)」では当て逃げによるお車の損害は補償されない場合もあるため、詳しくは保険会社に確認しましょう。
なお、当て逃げであったかどうかが不明確なケースや、事故直後に警察への届け出を行っていないケースでは、保険金請求に必要な交通事故証明書が発行されず、保険金が支払われない可能性があります。
警察への届け出は道路交通法上の義務であるため、保険金請求に必要かどうかにかかわらず、軽微な事故でも事故発生時には必ず警察へ届け出ましょう。
ひき逃げの場合
ひき逃げの被害にあった場合は、被害者自身が加入している自動車保険の人身傷害で補償を受けられる可能性があります。
また、ひき逃げなどで加害者から賠償を受けられない場合に、被害者を救済する制度として「政府保障事業」が設けられています。
政府保障事業とは、ひき逃げなどで加害者を特定できず、自賠責保険などから補償を受けられない場合に、被害者が受けた損害を国が加害者に代わって立替払いする制度です。政府保障事業で補償される損害の範囲および支払限度額は、自賠責保険と基本的に同じです。そのため、損害の全額が支払われるとは限りません。
なお、補償される損害の範囲および支払限度額は自賠責保険と同じですが、請求できるのは被害者のみであることなど、自賠責保険とは異なる点があります。
交通事故で加害者が使える保険
ここまでは、交通事故の被害者が補償を受けられる保険について解説してきました。続いて、「ご自身が加害者になってしまった場合」に使える主な保険は、以下の通りです。
| 補償範囲に含まれる方 | 加害者が使える主な保険 |
|---|---|
| 被害者への補償 |
|
| 加害者(ご自身)への補償 |
|
自賠責保険の補償範囲は、被害者の死傷に限られ、支払限度額も定められています。このため、被害者の死傷に対する十分な補償や、被害者の物に対する補償、あるいは加害者のケガやお車などに対する補償については、自動車保険で備える必要があります。
補償・特約の名称は保険会社によって異なる場合があります。
まとめ
交通事故の被害者になった場合、原則として加害者側の自賠責保険・自動車保険から補償を受けられます。加害者から十分な補償を受けられない場合には、被害者であるご自身の自動車保険を利用できる可能性があるほか、加入している生命保険などから補償を受けられる場合もあります。
万一のときに慌てないように、交通事故で受けた損害に対して、どの保険からどのような補償を受けられるのかをあらかじめ把握しておくことが重要です。
また、交通事故の被害にあう場合だけでなく、加害者になってしまう可能性も踏まえ、自動車保険の補償内容を定期的に確認し、必要に応じて見直しましょう。
監修:竹国 弘城
1級FP技能士・CFP®
RAPPORT Consulting Office(ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題についてみずから考え、行動できるようになってもらうための活動をおこなう。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。
資格情報: 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)