自賠責保険だけではなく、任意保険が必要な理由を解説!

2024年3月8日

自動車の保険は、大きく分けて2種類あります。加入が義務付けられている「自賠責保険」と、自分の意思で加入する「任意保険」です。でも、どうして任意保険が必要なのか、きちんと考える機会がないまま任意保険に加入している方も多いのではないでしょうか。
今回は、自賠責保険と任意保険の違いと、任意保険が必要な理由を解説します。

自賠責保険の補償は、
相手方のケガや死亡の補償のみ

自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責保険)とは、自動車損害賠償保障法によって、すべての自動車および原動機付自転車に加入が義務付けられている保険です。自賠責保険に加入せずに自動車を運転すると、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」「免許停止処分(違反点数6点)」、自賠責保険証明書を車に備え付けていない場合は「30万円以下の罰金」の罰則があります。

自賠責保険は、交通事故による被害者救済を目的としています。そのため、被害者のケガや死亡による損害のみ補償されます。相手方の物(自動車など)や、自分のケガや物(自動車など)の損害は補償されません。

自賠責保険の補償内容

支払限度額
(被害者1名あたり)
ケガによる損害 最高     120万円
後遺障害による損害 最高 4,000万円
死亡による損害 最高 3,000万円

自賠責保険の保険料は、車種や保険期間によって定められています。補償内容に差はなく、どの保険会社で加入しても保険料は同じです。

自賠責保険で補償されない部分を任意保険でカバーしよう

実際の自動車事故では、相手方をケガさせてしまったり、相手方の自動車や建物などを壊してしまうこともあります。また、自分がケガをしたり、自分の自動車が壊れることもあります。自賠責保険は相手方のケガや死亡の補償のみですが、任意保険は、こういった自動車事故に関連したリスクに対応できるよう、「相手方への補償」、「お車によるケガの補償」、「ご自身のお車の補償」の3つの基本の補償によって成り立っています。

自賠責保険と任意保険の補償の範囲

相手方への補償

対人賠償

事故により、相手方の車に乗っていた人や歩行者など、他人を死傷させてしまった場合に補償されます。自賠責保険でカバーできない分が補償されます。

対物賠償

事故により、他人の車や物などに損害を負わせた場合に、補償されます。

お車によるケガの補償

人身傷害

事故により、補償の対象となる方が死傷した場合に、過失の有無に関係なく、治療費や休業損害などが保険会社が約款で定めている金額で補償されます。また、相手方から賠償金が支払われた場合などは、その額を差し引いた分が補償されます。

ご自身のお車の補償

車両保険

事故により、自分の車が壊れた場合の修理費等が補償されます。

任意保険なしで事故を起こしたらどうなる?

自賠責保険に加入していれば、相手方のケガは自賠責保険の支払限度額までは補償されます。しかし、損害賠償額が高額になり、自賠責保険の補償では不十分な場合もあります。また、前述のとおり自賠責保険では相手方の物(自動車など)や、自分のケガや物(自動車など)に対する補償はありません。

誤って人をはねて死亡させてしまったり、重い後遺障害を負わせてしまった場合、加害者は億単位の損害賠償額を請求されることもあります。また、他人にケガを負わせていなくても、他人の物を壊してしまった場合には損害賠償責任が発生します。

対人事故

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認定総損害額 判決年 被害者性年齢 被害者職業 被害態様
5億2,853万円 2011年 男41歳 眼科開業医 死亡
4億5,381万円 2016年 男30歳 公務員 後遺障害
4億5,375万円 2017年 男50歳 コンサルタント 後遺障害

対物事故

認定総損害額 判決年 被害物件
2億6,135万円 1994年 積荷(呉服・洋服・毛皮)
1億3,450万円 1996年 店舗(パチンコ店)
1億2,036万円 1980年 電車・線路・家屋

認定総損害額とは、被害者の損害額(弁護士費用を含みます)をいい、被害者の過失相殺相当額などのてん補額を控除する前の金額をいいます。

出典 : 損害保険料率算出機構「2022年度 自動車保険の概況」

もしも任意保険に加入していなかったら、自賠責保険で補償されない範囲や自賠責保険の支払限度額を超える部分の賠償金は、自己負担によって支払わなくてはなりません。すぐに支払うことができない場合、賠償金を長期にわたり返済したり、強制執行により不動産や給与などを差し押さえられたりすることになります。

保険とは、もしものときの補償を準備しておくものです。事故を起こした場合のリスクを軽減するためには、任意保険に加入しておくべきでしょう。

監修:新井 智美

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆および監修をこなしており、これまでの執筆および監修実績は2,500本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員