子どもを交通事故から守りたい。 「もしかもマップ」プロジェクトの挑戦

2022年04月28日

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&eアンディー では、子どもが被害にあう悲しい事故をひとつでも減らすべく、2022年4月27日に「もしかもマップ」というサービスの提供を開始しました!今回は「もしかもマップ」について、担当者であるCX推進部の茂谷逸平さん、サービス開発にご協力いただいた金沢大学 融合研究域 融合科学系の森崎裕磨先生のお二人にインタビューしました。

茂谷 逸平(もたに いっぺい)/CX推進部

広告制作会社のプランナー職を経て2021年5月にイーデザイン損保に入社。事故のない世界を目指すためのプロジェクト「SafeDriveWith」の企画推進を担当。様々な企業や自治体、研究機関と共創しながら事故を減らすための取り組みを進めている。

森崎裕磨(もりさき ゆうま)/金沢大学 融合研究域 融合科学系 特任助教

交通・防災まちづくり研究室では、交通計画、防災計画、維持管理計画、まちづくりに関する研究を推進。土木工学の研究をベースに、ビッグデータ、情報学、医学、保健学、統計学、AIなど様々な分野の知識を用いて異分野融合の研究を行っている。

「もしかもマップ」誕生のきっかけは、子どもが犠牲になった悲しい事故

――「もしかもマップ」とはどんなサービスなのか教えてください。

茂谷さん:「もしかもマップ」は、主に小学校就学前後のお子さまとその保護者を対象にした、ご自宅の近くや通学路上にある「交通事故に注意すべき危ない場所」を知ることができる地図サービスです。&eアンディー の契約者だけでなくどなたでも利用することができます。

もしかもマップのアプリ画面

親子で自宅の近くや通学路を歩いていただきながら「ここ危ないな」と思った場所には「もしかもマップ」の地図上でピンを立てることができ、このピン立てを全国のユーザーが参加して行うことで、大きな「交通事故危険マップ」が出来上がります。親子で歩きながら「ここ危ないね」という会話をしていただくことで、事故リスクの新しい気づきや交通安全への意識向上も期待できます。

――なぜ「子どもの交通安全」に注目してサービスを開発したのでしょうか?

茂谷さん:きっかけになったのは、2021年6月に千葉県八街市で下校途中の小学生5人が死傷した交通事故でした。この事故を受けて、社長の桑原さんをはじめ社内のクルーに「こんな事故はなくさなきゃいけない」という強い想いが生まれました。しかし一方で「自動車保険だけでは事故のない世界は実現できない」とも感じていました。「子どもの事故をなくす」という目的にフォーカスした他の切り口が必要だったのです。具体的なアクションを考える中で、チームのみんなからは「交通事故はドライバーの視点だけでなく様々な側面から考えないといけないよね」という意見が以前からあがっていました。

中でも、「魔の7歳児」という言葉が社会問題になっているように、小学校就学前後の歩行者が絡む交通事故が他の年代に比べて非常に多いということから、ここに対する施策をしっかりと考えていくことで事故の削減に貢献していこうということになりました。

こうした流れが「子どもたちのために交通安全マップを作ろう」というアイデアにつながっています。そして、子どもの交通安全を専門に研究されている方としっかりと共創していきたいという想いがあり、金沢大学 交通まちづくり研究室の森崎先生とご一緒することになりました。

――森崎先生、改めて「魔の7歳児」と言われる小学1年生の交通安全上のリスクについて、その特徴と対処法を教えてください。

森崎先生:「魔の7歳児」の事故には、「一人でいるとき」の「登下校の時間帯」に発生しやすいという特徴があると学術的にも言われています。子どもの視界というのは大人と比べてとても狭いので、そこに注意力散漫な状態が重なると事故が起きてしまうのです。

この事故リスクを減らすために必要なポイントは、ご家庭における「教育」と「実践」です。「教育」というのは親子のコミュニケーションのなかで事故のリスクを意識させること、そして「実践」は地図を見たり実際に歩いたりしてリアルな現場をイメージしながら事故のリスクを考えること。この2つのサイクルが事故を減らすために重要です。

「もしかもマップ」は「教育」と「実践」の両方を実現できるのではないかと思います。「もしかもマップ」は、交通事故のリスクが高い危険な場所を知ることができる、しかもそれを全国規模で展開するということに大きな価値があると思います。

目指したのは、小学1年生が楽しみながら学べるコンテンツ

――この「もしかもマップ」では「もしかもドリル」というコンテンツも用意されています。どのようなものでしょうか?

親子で交通ルールを学べる「もしかもドリル」

茂谷さん:森崎先生のおっしゃる「教育」と「実践」をどう実現するかというところで、「もしかもドリル」は「教育」の部分をカバーします。小学校1年生の子どもが理解できる基本的な交通安全のルールを、わかりやすいシンプルな内容でイラストを使って楽しく知ってもらうことを目的にしています。ドリルを通じて「最低限、どこに気をつけなければいけないのか」を学んでいただけます。

子どもが楽しく学べるクイズ形式に

――コンテンツの制作にあたっては森崎先生のどのような知見が活かされているのでしょうか?

茂谷さん:子どもの事故を削減するために注意してほしい交通安全ルールについて様々な仮説を立てて、それが本当に有効なのかについて森崎先生の交通事故研究と照らして検証しています。加えて、先ほど森崎先生が説明された子どもや事故の特徴、子どもの事故を減らすための「教育」と「実践」について様々なアイデアをコンテンツに反映させています。

――子どもたちに楽しんで使ってもらうためのデザインやコンテンツの工夫についても教えてください。

茂谷さん:いいコンテンツを作ってもまず子どもたちに使ってもらわなければなにも意味がありません。親しみやすさや面白さという点については森崎先生のご意見を取り入れながらとてもこだわりました。特に想定している年齢層が小学校1年生ということもあり、使い勝手で迷わないこと、わかりやすくシンプルであることは徹底しました。またドリルについても「子どもたちは集中できない」という前提に立ち、問題数や内容、UI を考えています。楽しみながら交通安全について意識できることを目指しました。

――「もしかもマップ」というネーミングも親しみやすさを感じますが、どのような由来があるのでしょうか?

茂谷さん:「もしかも」という言葉には親子の会話をイメージしています。例えば「もし、ここで左右の確認をしなかったら?」という問いに、子どもが「車が飛び出してくるかも」と答えを返すような感じです。親が子に問いを投げかけながら、それに対して子どもが想像力を働かせながらマップを使ってほしいという想いを込めて「もしかも」というネーミングにしました。

――この「もし子」のイラストもとても可愛くて親しみやすいですよね!

茂谷さん:キャラクター「もし子」にも子どもたちにとっての親しみやすさを込めました。社内クルーやそのお子さんの意見を取り入れながらキャラクターを決めていきました。もちろん、かわいらしさや面白さだけでなく、「もしかもマップ」上では「もし子」が交通標識のような役割を果たすことをイメージしたデザインにしていて、子どもが地図上で「もし子」を見つけたら「事故に注意しないと」という意識が生まれることも期待しています。

カラーコーンをモチーフにした「もし子」

産学連携から子どもたちを守るプラットフォームを確立したい

――リリースしたばかりのサービスですが、「もしかもマップ」の今後の展開について教えてください。

茂谷さん:まずはユーザー体験を磨くことが大切だと思っています。「もっとこうしたほうがお子さんに楽しみながら使ってもらえるのでは」「もっとこうすれば親子で交通安全について会話が弾むのでは」という意見は使っていただかないとわからない部分でもあります。これから多くの参加者の声を聞きながらサービスを進化させていきたいと思っています。

森崎先生とご一緒しながら金沢大学附属小学校でも使っていただき、児童のみなさんから様々な意見をいただいたり、サービスの有効性を検証したりする実証実験も計画しています。

同時に、この「もしかもマップ」を社会に役立てていくために危険個所のピンも増やしていきたいですね。全国の自治体や学校で「通学路交通安全マップ」を制作しているところは多いので、それらのデータも統合して全国各地で活用されるマップに成長させていければと考えています。

森崎先生:通学路交通安全マップを全国統一のフォーマットで整備するという取り組みはこれまで前例がありませんので、「もしかもマップ」の今後の取り組みには大きな期待を持っています。私たちも今後ご一緒しながら学術的な視点からの分析・解析を保護者のみなさんや「もしかもマップ」の進化にフィードバックできればと思っています。

――森崎先生、イーデザイン損保とのこれからの共創にどのようなことを期待しますか?

森崎先生:子どもの交通事故についてはまだまだ明らかになっていないこともあります。イーデザイン損保が保有されている様々なデータを学術的に分析させていただくことができれば、子どもの交通安全に関する研究がさらに進むのではないかと思います。

茂谷さん:&eでは契約者のお車にセンサーをつけて運転状況を記録して、そのデータを交通安全に役立てたいと考えています。「もしかもマップ」は事故の被害者側になる親子の視点から交通安全を考えたサービスですが、ここに事故の加害者側になるドライバーの運転状況の視点を組み合わせて因果関係を分析することで、交通事故研究の可能性が広がるのではないかと考えているのですが、いかがでしょうか?

森崎先生:視点が増えるのは非常に重要ですね。ドライバーが事故を起こす原因には加害者・被害者の不注意もありますが、加えて道路構造の特徴というものもあります。加害者側、被害者側双方の視点で「ここ、危ないな」と思ったところが事故のリスクが最も高いわけです。そのようなデータはまだ世の中には存在していないと思います。ぜひ今後一緒に検証していきたいですね。

茂谷さん:様々なデータを掛け合わせることで「事故の真因」を見つけ出し、それを様々な形で世の中に還元したいですね!

撮影のためにマスクを外しています。

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