安全運転義務とは?違反行為の内容や反則金・点数についても解説!
2023年10月18日
最近、テレビやラジオなどで交通事故のニュースが流れるたびに、耳にするようになったのが「安全運転義務違反」という言葉です。今日における交通事故原因の半数以上はこの「安全運転義務違反」です。ここでは「安全運転義務」とは何か、また「安全運転義務違反」の内容や罰則規定について詳しく解説したうえで、安全運転義務違反を防ぐために大切なことをお伝えします。
安全運転義務とは?
「安全運転」または「安全運転義務」とは、道路交通法(以下「道交法」という。)第70条で以下のように明確に規定されています。まずはドライバーとして、安全運転義務とは何か、正しい運転とはどういうものかを理解することが重要です。
安全運転の義務[道交法第70条]
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
わかりやすく説明すると、安全走行に必要とされる適切な運転操作、正しい状況判断義務が、すべてのドライバーに課せられているということです。この適切な運転操作、正しい状況判断を怠ると、「安全運転義務違反」として処罰の対象になりますのでしっかり理解しましょう。
安全運転義務違反になる
7つのカテゴリー安全運転義務違反と言ってもその内容はさまざまです。主に「操作不適」「前方不注意」「動静不注視」「安全不確認」「安全速度違反」「その他」などに分類されています。
操作不適
運転操作ミス全般を指します。ブレーキペダルの踏み間違い、ハンドル操作の過ちなどが代表的で、片手運転もこれに該当します。昨今、社会問題化している、高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えてしまうというミスも代表的なケースです。
前方不注意
「漫然運転」と「脇見運転」に分類されますが、どちらも大事故に直結する危険な運転です。
漫然運転
前方を見て運転しているにも関わらず、考え事などをして状況を把握できず、他の車や歩行者の動きや信号機を見落とすことを指します。また、速度が出すぎていることに気付かないことも含まれます。
脇見運転
車外の景色に気を取られたり、車内で探し物をしたりして、前方不注意となった状態のことを指します。なお、運転中にスマートフォンやカーナビを操作することは道路交通法第71条で禁止されています。
動静不注視
漫然運転とは異なり、他の車や歩行者の存在を認識しているにもかかわらず、危険はないと勝手に判断し、その後の動静に注意を払わないことを指します。交差点を右折する際、対向車を確認しておきながら先に行けると判断し、無理に右折したため対向車と衝突したといった例も該当します。
安全不確認
一般に前方・後方不確認、左右不確認と呼ばれるものです。交差点右折時に左側の歩行者に気を取られ、右折先の歩行者に気付かず事故となるケースなどが該当します。
安全速度違反
一般的な速度違反とは異なり、制限速度内で走行しているものの、交差点や横断歩道、見通しの悪いところで徐行や減速を怠ったために事故になったケースが該当します。
その他(予測不適)
その他にも安全運転義務違反となる内容はありますが、特に注意が必要なのが「予測不適」です。対向車が避けてくれると思った、それほどスピードは出ていないと思った、十分に車間を取ったつもりだった、というように自分の運転間隔の誤りや、相手の速度や距離、行動に対する判断誤りが、事故の原因となったようなケースが該当します。
以上のことから、ちょっとした不注意が大事故に結びつくことが容易に想像出来るでしょう。交通事故の多くが、この安全運転義務違反によって発生しているのです。
安全運転義務違反は、一般の自動車や二輪車、原付だけでなく、自転車にも適用されます。最近では、本来自転車で走行してはいけない歩道でスピードを出しすぎ、歩行者と接触して怪我をさせたり、死亡させたりする事故が後を絶ちません。最近の自転車にはスポーツタイプのものも増え、速度の出しすぎが懸念されます。市街地や繁華街など人通りの多いところを走行する際は可能な限り車道側を走り、歩道は自転車通行可の場合のみ徐行して走り、不可の場合は降りて自転車を引くなどして安全には細心の注意を払いましょう。
安全運転義務違反で
事故を起こした際の 反則金・点数は?安全運転義務違反の事故では、違反点数は2点となっています。反則金については車両の大きさごとに細かく定められていて、大型車が12,000円、普通自動車が9,000円、二輪車が7,000円、原付が6,000円となっています。これはあくまで安全運転義務違反による行政処分です。反則金を納めない場合や、安全運転義務違反により重大な事故を引き起こした場合は、相応の刑事処分を受けることとなります。
また、自転車については、道交法改正により、平成27年6月1日から「自転車運転者講習制度」が施行されています。3年以内に2回の取り締まり、または2回以上交通事故を起こした運転者は「自転車運転者講習」を受けなくてはならなくなりました。自転車でも重大な事故を引き起こした場合は、自動車の場合と同様に刑事処分を受けることとなります。
安全運転義務違反により
引き起こされる交通事故最後に、安全運転義務違反による事故件数のデータを紹介します。
令和4年中の安全運転義務違反による交通事故発生件数※
「令和4年中の交通事故の発生状況(警視庁)」の「法令違反別の状況 原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別交通事故件数の推移」より引用。
- 運転操作不適・・・19,132件
- 漫然運転・・・23,259件
- 脇見運転・・・36,397件
- 動静不注視・・・27,984件
- 安全不確認・・・85,438件
- 安全速度・・・1,627件
- その他・・・4,430件
交通事故の多くは、安全運転義務違反に起因するものです。裏を返せば、安全運転義務を全うすれば、交通事故を引き起こしたり、巻き込まれたりする可能性も低くなるということです。
安全運転義務違反を
しないためにできることドライバーは運転に慣れてくると、安全運転義務を軽視してしまう傾向にあります。しかし、安全運転は、運転者本人だけでなく、同乗者や歩行者、他の運転者の命を守るために欠かせません。
企業においては、管理者によるドライバーへの安全運転教育やアルコールチェックなどの管理体制を徹底することが非常に大切です。
まとめ
~安全運転でドライブを楽しみましょう~運転免許を交付されている人であれば、安全運転の重要性は十分に理解しているはずです。ハンドルを握る際は常に気を引き締め、安全運転義務を意識して、セーフティドライブを心がけてください。
また、車両を管理する企業においては、ドライバーの安全運転教育や健康管理(睡眠不足やアルコールチェックなど)をしっかりと行いましょう。
2023年9月末時点での内容です。
監修:鈴木ケンイチ
1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するのを目標とする。