ハイブリッド車とは?仕組みや種類をはじめ、バッテリー寿命などの気になる点を解説します
2024年3月25日
普段の買い物やレジャーなど、移動するのに便利な自動車は、多くの方の生活に欠かせない乗り物です。最近では、ガソリン車だけでなく、ハイブリッド車や電気自動車など、さまざまな種類の自動車が販売されています。
本記事では、ハイブリッド車の仕組みを説明したうえで、メリットやデメリットなどを解説します。車の購入を検討するにあたり、あらためてハイブリッド車の特徴を理解しておきましょう。
ハイブリッド車とは
ハイブリッド車とは、2つ以上の動力源(原動機)をもつ自動車であり、略称は「HV(hybrid vehicle)」です。一般的に、内燃機関(エンジン)と電動機(モーター)を動力源とした自動車を指します。
運転状況に応じて、「エンジンのみ」「モーターのみ」「エンジンとモーターの両方」で走行するなど、動力源を使い分けられる点が特徴です。日本では、1997年にトヨタ自動車が世界初の量産型ハイブリッド車「プリウス」を発表し、注目を集めました。
ガソリン車に比べて環境に優しい点が広く知られているハイブリッド車ですが、同じくエコカーとして類似しているのが「電気自動車」です。
エンジンとモーターの両方を動力とするハイブリッド車に対し、一般的な電気自動車は「電気のみ」で走行します。電気自動車には、バッテリーの電池を使って走る「BEV」や、バッテリーに貯めた電気以外にも水素と酸素で発電して動く「FCEV」など、さまざまな種類があります。
ハイブリッド車の仕組み
ハイブリッド車の方式は、主に次の3種類に分けられます。
- パラレル方式
- シリーズ方式
- スプリット方式
それぞれ、どのような仕組みなのか見てみましょう。
パラレル方式
パラレル方式では、基本的に、エンジンを動力源として走行します。ただし、発進する際や急加速する場合に、電気によるモーターがサポートする仕組みです。
発進や加速など通常よりパワーが必要な場面で、モーターが補助するため、無駄な燃料消費を抑えられます。
シリーズ方式
シリーズ方式は、電気によるモーターメインで走行する仕組みです。シリーズ方式におけるエンジンの役割は、電気をバッテリーに蓄えるために発電機をまわすことです。
なお、燃料が切れてもバッテリーが残っていれば、モーターのみで走行できます。
スプリット方式
エンジンとモーターを細かく使い分け、動力アシストとモーター走行を同時に行う仕組みを、スプリット方式といいます。
「シリーズ・パラレル複合方式」と呼ばれることもあります。
ハイブリッド車の知っておきたいポイント
ハイブリッド車の走行可能な距離や、各種バッテリーの寿命はどの程度なのでしょうか。ハイブリッド車の気になるポイントを見てみましょう。
走行距離の目安は?
一般的に、ハイブリッド車の走行距離の目安は、「約10万キロ」といわれています。これは、ハイブリッド車の駆動用バッテリーが、走行距離10万キロを目安に寿命を迎えるためです。
しかし、あくまで目安なので、走行距離が10万キロを超えたからといって、必ずしも車が走れなくなるわけではありません。
通勤などで車に乗る頻度が多い方もいれば、週末に出かけるときだけ運転する方もいるでしょう。走行条件やメンテナンスの有無などによって、車の寿命は変わります。
バッテリーの寿命の目安は?
ハイブリッド車には、駆動用のメインバッテリーと電気系統を動かすための補機バッテリーの2つが搭載されています。
一般的に、駆動用バッテリーは約5〜8年、補機バッテリーは約3〜5年が寿命の目安です。自動車メーカーによって、交換などの保証対象となる年数や条件(走行距離)が定められているので、一つの基準として把握しておきましょう。
ハイブリッド車のメリット
ハイブリッド車は、燃費が良く環境に優しいだけでなく、減税や補助金の対象であるなど、メリットが多くあります。ハイブリッド車を選ぶ5つのメリットを紹介します。
燃費が良い
ガソリン車と比べると、ハイブリッド車のメリットとして「燃費の良さ」が挙げられます。車の維持費のうち、利用頻度によってはガソリン代が大きな割合を占めます。通勤や買い物など、毎日車を使う場合、ガソリン代が家計を圧迫しているケースは少なくありません。
ハイブリッド車は、エンジンと電気によるモーターを組み合わせて走行するため、ガソリンが減りにくいことが利点です。
エコカー減税や補助金の対象となる場合がある
政府は、ハイブリッド車や電気自動車など、環境に優しい自動車の普及を目指しています。そのため、排出ガス性能や燃費性能などに応じて、税制面の優遇措置や補助金制度を設けています。
ハイブリッド車が対象となる、主な税制優遇措置は下表の通りです。
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税制上の優遇措置 | 優遇される税金 | 適用内容 |
---|---|---|
エコカー減税 | 自動車重量税 |
|
グリーン化特例 | 自動車税・軽自動車税 |
|
環境性能割 | 自動車を取得したときの自動車税・軽自動車税 |
|
自動車の車検時に課税されるのが「自動車重量税」、自動車の保有者に対して毎年課されるのが「自動車税・軽自動車税」です。そして、2019年に廃止された自動車取得税にかわって、「環境性能割(自動車税・軽自動車税)」が創設されました。要件を満たすハイブリッド車の場合、自動車の取得・維持にかかる税金を抑えることが可能です。
また、電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池自動車など「クリーンエネルギー自動車」を購入する場合、国から補助金を受け取れる「CEV補助金」制度があります。
出典:国土交通省「エコカー減税(自動車重量税)の概要」/国土交通省「自動車税のグリーン化特例の概要」/東京都主税局「自動車税環境性能割」/国土交通省「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の概要」
バッテリーの寿命が長い
ハイブリッド車には、駆動用バッテリーと補機バッテリーがあります。そのうち、補機バッテリーは、ガソリン車と同様の鉛蓄電池であることが一般的です。
ガソリン車の場合、エンジン始動などで電力を消費するため、約2〜3年でバッテリーが寿命を迎えます。一方、ハイブリッド車であれば約3〜5年が寿命の目安であり、ガソリン車と比べると、バッテリーの寿命は長い傾向にあります。
ただし、バッテリーの寿命に関しては、走行条件や使い方によって異なるため、一概には判断できません。
走行音が静か
ハイブリッド車の特徴として、「走行時の静音性」が挙げられます。
ハイブリッドシステムは電気モーターとガソリンエンジンの2つの動力源の相乗効果によって、動力性能と低燃費を実現したシステムです。電気モーターのみで走行したり始動したりする場合は、非常に静かであるため、早朝や深夜に車を利用する方にとってはメリットといえます。
環境に優しいエコカーである
ガソリン車の場合、走行時に排出するガスにCO2が含まれています。CO2は地球温暖化の原因であり、世界中でCO2削減への取り組みが実施されています。
自動車による排出ガスも、喫緊の課題です。多くの国で、電気自動車などCO2を排出しない車の普及が進められています。ハイブリッド車は、モーターで走行すればCO2を排出しないため、エコカーの代表として周知されています。
ハイブリッド車のデメリット
ハイブリッド車には多くのメリットがありますが、デメリットはあるのでしょうか。気をつけるべき2つの点を説明します。
車両価格が高い傾向にある
ガソリン車と比較すると、ハイブリッド車の車両価格は高い傾向にあります。車の購入にあたって、車両価格が高額だと悩む方も多いでしょう。
しかし、エコカー減税や補助金などの優遇措置、またガソリン代などの維持費を抑えられる点を考慮すれば、結果的に、ガソリン車よりも高いコストパフォーマンスを期待できる可能性はあります。
走行音が静かなので歩行者に気づかれない場合がある
ハイブリッド車のメリットの一つとして、「静音性の高さ」が挙げられます。
しかし、走行音が静かすぎて、歩行者などが車両の接近に気がつかないケースもあります。ハイブリッド車の特徴として把握し、運転する際には気をつけましょう。
本記事の情報は2024年2月末時点での内容です。
監修:木下 隆之
明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務。独立後、プロレーシングドライバーとして活躍。全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。雑誌にも11本の「連載エッセイ」に執筆。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。